MARK FREE (1993) / LONG WAY FROM LOVE
mark free 1. Someday You'll Come Running
 2. Stranger Among Us
 3. Coming Back For More
 4. The Last Time
 5. Hard Heart To Break
 6. High Life
 7. State Of Love
 8. Slow Down The Night
 9. Look Love In The Eyes
 10. Never Be A Next Time
 11. Long Way From Love


前回のロビー様に続き、女々しくも麗しい魅惑の新世界を展開してくれた稀有のお方として、このマーク・フリーを取り上げないわけにはいかない。僕の中ではもはや伝説クラスの1stソロ・アルバム。僕が持っているのは2000年再発の日本盤2枚組。

と、いきなり女々しいなどと書いてしまったが、どうぞ悪意の表れと誤解なきよう。まさにそれこそがこの作品に特別な魅力を授けている最大の要因なのだ。

では、なぜこれほどまでに女性的な面が打ち出されることになったのか。それは作曲を一手に引き受けているのがジュディス&ロビンのランダル母娘だからである。もう何の迷いもなく断言してしまうけれど、この二人、ソングライターとしては天才の領域にある。女性の気持ちが揺れ惑うその瞬間を丁寧に掬い取り、それを純度100%の形で音楽という形態に転化させたかのごとき、聴き手の胸を愛しさと・切なさと・あと何かでいっぱいにさせる奇跡的な作曲術。もう一度記すけどこの2人は天才です。本作のウラの主役。

ならば、表の主役は当然歌い手たるマーク・フリー(ex. KING KOBRA・SIGNAL・UNRULY CHILD)。周知の事実だが、この人、実はこの作品を発表後に性転換を行ってマーシー・フリー(♀)へと改名している。まあこれは後付けの情報であってこじつけ以外の何者でもないのかもしれないけど、本作が女性的な湿り気をたっぷりと帯びていたのは、ランダル母娘のインプットだけがすべてだったわけではないという証だと思う。張りのある情熱的なハイトーンVoには、彼(女)という人間の意志の強さと芯の確かさがはっきりと感じられる。しばしば感情過多ぎみに声が揺れるのもまた良し。この声が、一歩間違えればただ軟弱なだけになりかねない音像にハードな質感を与えることになった。あらゆる意味で、マークとランダル母娘はともに得がたいパートナーを手にしたのだ。

音楽的にはキラキラ・シャラシャラとした哀愁のキーボードがバックに絶え間なく流れ続ける叙情派ハードポップ路線。バックコーラスの女性Vo、さらには浮世離れしてるふうのフワフワとしたプロダクション…と体感上のヘヴィさはほぼ皆無ながら、それも本作では吉と出た。ハッピーな恋愛模様よりも主として「別れ」や「愛ゆえの葛藤」に重点を置いた世界観と絶妙なマッチングを見せている。

個人的な好みを言えば、6曲目の“High Life”のみ能天気系でちょいと余計っぽくも感じられるが、全体として実に秀逸な楽曲の集合体。僕がその核として特筆したいのは以下4曲。切ないイントロKeyに導かれてオープニングを劇的に飾る“Someday You’ll Come Running”を初めて聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。お恥ずかしながら腰が砕けました。そう、“Someday”のタイトルで英国のFMもカヴァーしていたあの曲です。4曲目の“The Last Time”は、必殺のサビメロはもちろんのこと、“Let the heartaches fade away~”から始まる裏メロディ(Bブリッジ?)も素敵な名曲で、僕はこれが一番のお気に入り。いつ聴いても、その展開美に涙腺が緩んで困ってしまう。“Never Be A Next Time”は、平坦なヴァースは特にどうってことないもののブリッジ~サビメロの泣きの威力は本作でも随一。そしてラストを飾る名バラード“Long Way From Love”。もうことばは要りません。

ありそでなさそなこの音像。僕の力量では良い比較対象が思い浮かばなくて申し訳ないのだけども、ともあれ悲しくも美しいメロドラマの真髄を心行くまで味わいたい方、これを聴かずして向こうの世界には逝かれませんぜ。フツーのポップスにも免疫のある人/抵抗のない人ならなおのこと。男泣き、ならぬ「女泣き」独特の深みにハマったが最後、しばらくはリピートしっぱなしになるでしょう。傑作。どうやら最近輸入盤で再発されたみたいですね。


ランダル母娘のお母さん、ジュディスは残念ながら亡くなってしまったのだそうで(R.I.P.)。娘さんのロビンが女性Voと組んだユニットVENUS & MARSは2ndの「NEW MOON RISING」のみ耳を通したが、リメイクの“The Last Time”はもちろん、“Bless A Brand New Angel”や“Last Chance Cafe”、“Tomorrow Doesn’t Matter Tonight”などの佳曲が聴ける良盤でした。さすがにこの「LONG WAY FROM LOVE」と比較すれば一段下がるけど。それと、オーストラリアのROXUSが発表した胸キュン・メロハーの好盤「NIGHTSTREET」の5曲目“Where Are You Now?”もこれぞのランダル節が聴ける秀曲で大好きです。

テーマ:HR/HM - ジャンル:音楽

【2008/08/08 21:34】 | HR/HM 旧譜レビュー | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
むーじゅさん
このアルバム懐かしいですね。僕もゼロコーポレーションから出ていたデビュー盤持ってました。

「ました」というのが悲しいところで、激しい音にはまっていた当時の僕は、社会人になった時にCDを大量処分した中にこのアルバムも入れてしまってました・・・

むーじゅさんの文を読んでると、特に好きだった①、④、⑪のメロディが頭でぐるぐる回りだしてきました。
【2008/08/10 08:42】 URL | よしよ #-[ 編集] | page top↑
こんにちはー。

いやいや、僕にもそういう経験ありますよ。まだメタル歴1~2年のときだったと思いますけど、SERGANT FURYの1stやTAD MOROSEの1stを処分してしまったんですよね。「別に大したことねえや」ってな具合で。一応MDに録音はしてあるのですが、出来ればCDで持っていたいのが人情というもの。特に前者はいま思い出しても痛恨の極みです。

人間の嗜好はいつ変化するから分かりませんから、それ以降HR/HMの作品を売りに出すことはなくなりました。例えそれがどんなにつまらなかったとしても、です。
【2008/08/11 08:55】 URL | むーじゅ #-[ 編集] | page top↑
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