OVERLAND (2008) / BREAK AWAY
overland.jpg 1. This Time
 2. Alive and Kicking
 3. Break Away
 4. Like A River
 5. Look Into Your Eyes
 6. After The Fire
 7. Evangeline
 8. Heartache Calling
 9. Mad Mad World 10. Lost In Paradise
 11. Rescue Me 12. Until Forever Comes


英国の至宝、スティーヴ・オーヴァーランドとスウェーデンの天才ソングライター・アンダース・リドホルムがタッグを組んだ恐るべきプロジェクト、その名もズバリOVERLAND。さてその出来やいかに。あらかじめ断っておきますが、長文です(笑)。

ことあるごとに書いているが、僕はスティーヴを「オーヴァーランド先生」と呼んで憚らないほど彼の声を偏愛LOVEしている身である。またコチラでも記したようにいまは亡きGRAND ILLUSIONの音楽にも完全に心を奪われていたので、このOVERLANDのニュースには心が熱くなった。最高の歌い手がこれまた最高の伴侶を得てどんな凄いものを披露してくれるのかと。

…が、大いなる期待に胸をときめかせてサクっと一聴した直後に僕の口から出た感想は、「あれっ、こんなもん…?」

アルバム冒頭の必要以上にモダンなアレンジにギクリ、上手いのは分かるけどいくらか上滑り気味のGソロや“Alive And Kicking”の妙な陽性っぽさに違和感、かと思えば全体としては楽曲が地味すぎる気もするし…。「ありゃー、これはやっちまったかな」というのが正直なところだった。

ところがここで悲劇のラック行きに終わらないのがこのOVERLAND。全国1万人のオーヴァーランド・ファンの皆様なら彼の歌唱の最大の魅力が「過酷な時の試練に半永久的に耐えうる、聴き手をいつまでも飽きさせない絶妙な味わい深さ」にあることを良くご存知かと思う。あのFMはもちろん、SHADOWMANもLADDERもそうだった。本作も聴きこめば聴きこむほど良さがじわじわと染みてくる作品に仕上がっている、とサルみたいにリピートしまくった今なら言える。魅力が分からないものを無理やり「素晴らしいに決まってる!」と自分に言い聞かせているわけではありません(笑)。

で、ようやくここからレビュー。ペール・スヴェンソンのバッキングVoとオーラ・アフ・トランペのテクニカルなリードGもあいまって、音楽的な印象はGRAND ILLUSIONのシルエットとほぼ重なり合う。あえて言うなれば1stの穏やかさと3rdの鮮やかなモダン性とを折衷したような雰囲気だと僕は感じた。当然CODEの音像にも近い。つまりはアンダースの作曲術が唯一無二の個性を完全に確立しているってこと。ただ今回は先生の声の魅力を前面に押し出すことに焦点を当てたためか、装飾自体は彼にしては結構落ち着いたものが多く、特にKeyは随分と控えめ。ここいらは作曲者としてよりもまずはプロデューサーとしてのバランス感覚が働いたのだろう。とは言っても他のメロハー・バンドの大勢と比べれば十分すぎるほどモダンかつ豪奢なバック陣だ。

そんな中で気負うことなく大人の存在感をさらりとアピールする先生の歌唱は相も変わらず最高の中の最高。この声が聴ければ他に何もいらないって本気で思わせてくれる人はそう多くない。節回しの巧みさ、包み込まれるような暖かさ…毎度のことながら思わずため息が漏れる。重要なのは、遥か昔のFM時代から現在に至るまで彼が一貫して俗なポップ・フィールドに片足を突っ込み続けていること。今回のパートナー選びからも分かるように、自らの稀有の声が一番生きる手法を誰よりも良く理解してくれていて実に頼もしい。

アンダースと組んだ効果がてきめんに表れたのはオープニングの“This Time”あるいは“Evangeline”のようなリズミックかつ重層的な楽曲。こんな曲を書く人はいままで先生の周りには居なかったはず。良いね。このアルバムは中盤にハイライトが設けられていて、その核となっている“After The Fire”も当然素晴らしいが、個人的にはポップなイントロ&ヴァースから一転、伸びやかなサビメロとバックのギター・リフとが切なさをじわじわと煽りたてる“Heartache Calling”が一番のお気に入り。ラストのバラード“Until Forever Comes”が醸し出すしっとりとした情感も先生ならではの味ね。

…と、一応は褒めてみたものの、率直に言えば2人がコラボするという情報から膨らみに膨らんだ僕の大いなる期待を上回るような衝撃的な作品ではない。が、先生関連の作品にいままでハズレがないように、本作が安心して聴きこめるまさに「匠」の一枚なのも確か。冷静に考えてみれば、きらびやかな即効性を旨としてきたアンダース作の楽曲と、先生がこれまでに築いてきたマイルドな世界観とではある意味で逆のベクトルを向いており、つまりこのOVERLANDの第一印象が「派手なんだけど、地味」に落ち着くのは自明だったのだ。あとはそこから聴き手が面白みを見出せるかどうかってことだと思う。僕はこのコンビで少なくともあと一枚は聴いてみたい。この2人の才能が本気で化学反応を起こしたらこんなもんじゃ済まないはずだよ。この作品に関して言えば、熱心な先生ファン向けの商品という域からは大きく脱していないと思う。

まあ文句はこれくらいにして、マニアな僕としては先生への深い思い入れを改めて確認するための一枚。音楽にも分かりやすいインパクトが求められがちな「試聴→ダウンロード(→ワンクリック削除)」全盛のこの時代にスルメ型の音楽性を持つ先生のようなミュージシャンはますます苦戦を強いられるのかもしれないけど、これからも変わらずにその素敵な歌声を僕たちに届けて欲しいと心から願う。少なくともここに一人、その声を愛してやまない信奉者が居ますよ。

さてここからは余談。オーヴァーランド初心者の方がまずもって聴くべきなのはFMの1st「INDISCREET」、2nd「TOUGH IT OUT」、そして4th「APHRODISIAC」でしょうな、客観的に考えて。特にポップ×ブルージーな名盤4thが気に入れば貴方はこちら方面の素質ありですから、どうぞSHADOWMANやLADDERにも安心してお進みください…とこの際だから宣伝しておきましょうね(笑)。アルファから出た日本盤は結構安く拾えると思います。同系統の曲で言うとJOURNEYの名曲“Lights”をも上回る(と僕が確信する)“Closer To Heaven”はもちろん、本編ラストの“Hard Day In Hell”なんかは是非聴いてもらいたいなあ。1stと2ndは80年代型・ときめき☆メロハーに少しでも興味のある人なら必聴かと存じます。至高の名曲“Bad Luck”“Someday”は涙なくして聴けませんことよ。先生が結構恥ずかしい歌詞を溌剌と歌っていらっしゃるのもいとおかし。

よっしゃ、気持ちが乗ってきたからもう少し(笑)。FMは残念ながら3rdと5thは聴いていないので分からないけど、6thの「PARAPHERNALIA」も穏やかなAORとして考えればかなり出来は良い。歌の巧さをじっくりと堪能できます。

SHADOWMANを聴くならまずは日本盤未発の1st「LAND OF THE LIVING」から。“Medicine To Me”、“Touched By An Angel”、“Silver Lining”etc…のほどよく湿った佳曲がたっぷり。2nd「DIFFERENT ANGLES」は僕の好みから言えば先生の歌唱&楽曲がともに少しあっさりし過ぎていて深くはのめりこめなかったな。

THE LADDERは親しみやすいポップ感覚全開の1st「FUTURE MIRACLES」(ちなみにGはex.TENのヴィニー・バーンズ)、シリアスなドラマ性とアルバム全体の統一感を強めた2nd「SACRED」ともに安心してオススメできます!僕が大好きな1stの“Time For Changes”や“Closer To Your Heart”、あるいは2ndの壮大な“Make A Wish”などは先生のキャリアの中でもベストの部類の楽曲だと思うぞー。

はあはあ。まさかキーボードを叩いていて息が上がるとは思わなんだ(笑)。とりあえず余は満足じゃー。

それでも最後に(笑)。BOSTONトリビュートで先生が歌ったとされる奇跡の名曲“Amanda”を聴かずして死にたくない。もう音を想像しただけで涙目。必死に探しているんだけどなかなか見つからないんだよなあ。いつかはきっと!


テーマ:HR/HM - ジャンル:音楽

【2008/05/26 18:18】 | HR/HM 新譜レビュー | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
<<真夜中の独り言 | ホーム | 先ごろのお買い物 (GLORY etc...)>>
コメント
むーじゅさん、こんばんは。
私は逆にあまり期待してなかっただけに(笑)、一聴目から「おお!」と感動しました。
"This Time"や"Like A River"のTOTOテイストも好きですが、
やはり"After The Fire" "Heartache Calling"の熱いHRチューンのカッコよさでしょう。
アンダースとスティーブの見事なケミストリーです。
この先も期待したいプロジェクトですね!
【2008/05/27 02:16】 URL | RABI #mxdmXl.w[ 編集] | page top↑
RABIさん、こんにちは。コメント頂けて嬉しいですー。
僕のこの駄レビューはかなり信者モードの入ったアイタタな内容だと思うので、RABIさんのように落ち着いた「賛」の意見を聞けて安心しました(笑)。
それにしても“After The Fire”はたまりません。最初のサビでスッと一旦引く感じも、そのあとのツボを心得た盛り上げ方も最高です。もちろんタイトルどおり胸キュンな“Heartache Calling”も。彼の新たな代表曲になりそうですね。
どうやらスティーヴはアンダースのスタジオまでわざわざ出向いてレコーディングをしたようです。謝辞にはアンダースの家族が真っ先に挙げられていました。微笑ましい限りです。二人がこれからも良好な関係を保ちながら、また素晴らしい作品を届けてくれる日を楽しみに待ちましょう。次はもっと凄くなるはず!
【2008/05/27 13:19】 URL | むーじゅ #-[ 編集] | page top↑
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://mooju.blog121.fc2.com/tb.php/72-d7b8b18a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |