TEN (1996) / TEN
TEN 1st 1. The Crusades / It's All About Love
 2. After The Love Has Gone
 3. Yesterday Lies In The Flames
 4. The Torch
 5. Stay With Me
 6. Close Your Eyes And Dream
 7. Eyes Of A Child
 8. Can't Slow Down
 9. Lamb To The Slaughter
10. Soliloquy / The Loneliest Place In The World


最近はすっかりと影の薄くなった感のある英国の叙情派メロディアス・ハード・ロック代表TEN。彼らも僕の嗜好の根っこを固めてくれた大切なバンドなので、いまさらではあるがしっかりと持ち上げておきたい。取り上げるのは衝撃のデビュー作(だったらしい)傑作1st。
僕が最初にTENを聴いたのは3rdの「THE ROBE」で、その時点では「お、いいんじゃね?」程度の軽~い認識だったのが、この1stを聴いて悶絶したのだった。1曲目の暗く切ない“It’s All About Love”からして鳥肌が立つが、なんのなんの、これは軽いまだ小手調べに過ぎない。透明で繊細なコーラス、そして哀愁のギター・リフ選手権90年代部門(?)でおそらくベスト3に入るであろうあのテーマ・メロディが流れ出す…。

そう、僕が今でもTENの最高楽曲と信じる“After The Love Has Gone”だ。

初めてこのアルバムを聴いた高校3年の春、この曲を聴きたいがために何回も猿のように再生ボタンを連打して繰り返したため、なかなか次の曲へと移れなかったのも良い思い出だなあ(笑)。何度聴いても同じように悲しくなるサビメロ、ワウペダルまでハメてしまう七色のギター、絶妙のタイミングで繰り出されるKey、何もかもが最高の中の最高です。僕の人生のサウンドトラックの1曲と言ってもいいな。

アルバムは陰影を帯びたドラマを満喫させる前半から、キャッチーさと泣きの要素が最高レベルで配合する中盤のハイライト“Stay With Me”、続いて夢見るような淡く幻想的なポップさが気持ちよく表出する後半戦、そして終盤に配されたゲイリー・ヒューズにしかこんな曲は書けないであろう劇的な“Lamb To The Slaughter”から究極の慟哭バラード“The Loneliest Place In The World”へ…。こうして流れを書き出してみてもやはり完璧、捨て曲がない、どころかもはや非の打ち所がない。なんてこった。

さあ、ここで聴き手に課された試練は、このゲイリー・ヒューズの特徴的な声が肌に合うかどうか、のみ。落ち着いて聴いてみると決して抜群の歌唱力を持つ人ではないし、何よりこの籠ったような声質が嫌な人はその時点でパスかもしれない。どうせならゲイリーがソロ作を作曲&プロデュースしたボブ・カトレイ(MAGNUM)にそのままTENに加入してもらえば、なんて言ってくれる口の悪い人も居たようで(笑)。まあその言い分も確かに分からなくはない。しかし、贔屓の引き倒しになってもいいから言わせてもらおう。

それでも僕はゲイリーの声が好きだ!大好きなんだあ!!

この煮え切らなさ、この哀感、この湿り気!もうそのすべてがいとおしい。一度クセになったら抜け出せないある種の中毒性を持つ実に魅力的な声ではないか。彼の歌メロがあるからTENを聴く、いまだにそう考える隠れファンは日本に少なからず潜伏しているはずだと信じる。また彼が作り上げる絶妙なコーラスもTENのトレード・マークだ。

そして、このバンドが日本で人気を集めたもう一つの理由。それは間違いなく名ギタリスト、ヴィニー・バーンズの存在にあるだろう。アメリカにラルフ・サントーラあれども、どっこいイギリスにはヴィニー・バーンズあり!ともに、あのシェンカーやムーア(ともに全盛期)にモダンなタッチをちょいと加えたような、人間味あふれる音色を奏でてくれる泣きのギタリストだ。彼なしに登場時のTENがあれほどの支持を集めえたか。おそらく答えはノーだ。

TENに限らず、僕の大好きなメロディアス・ハード・ロックは往々にして各曲の音像が均質化しやすい弱点を持つジャンルだと思う。メロディの充実に気を配るのはよいのだが、そのためなのか何なのか作品全体の起伏やダイナミズムが損なわれて平坦に聞こえる作品は決して珍しくない。ひたすら心地よいゲイリーの歌声&メロディにも(だからこそ)そうした傾向が見られるのだが、それを救ったのがヴィニーの変幻自在の泣きのソロだった。彼の作り出す“小劇場”が安定した留め金になったTENの音楽は、哀愁メロハーとして理想的とも言える境地にこの1stの段階ですでに到達していたのだ。

彼を伝説にしたのが“The Loneliest~”におけるラスト2分間のソロ。曲がフェイド・アウトするまで延々と弾いて弾いて弾き倒すこのプレイでどれほどの人が涙を搾り取られたのだろう。元々が素晴らしい泣き泣きの名曲の感動を何倍にも増幅した功績は計り知れない。

とにかく、HR/HM初心者にはこの1stと2nd「THE NAME OF THE ROSE」だけでも聴いていただきたいところ。2ndのタイトル曲“The Name Of The Rose”は非常~に贅沢な曲展開があなたを待ち受けている究極の逸品。これと劇的HR“Wait For You”のためだけに買っても損はしない。極端な話、TENを知る上で押さえるべき曲の6割はこの2枚に収められていると言ってもいい。

で、余裕があれば2001年の起死回生の一枚「FAR BEYOND THE WORLD」にも触れてもらいたい。TEN随一の哀愁の名曲“Strange Land”(これは泣けます)、それに準ずる“Glimmer Of Evil”、“Heart Like A Lion”、“High Tide”、“Outlawed And Notorious”などの佳曲満載。ていうかボーナスも含めて久しぶりの捨て曲なし。カタログ中もっとも都会的なほの暗さと気だるさに満ちた異色作だが、このメロディの充実度は特筆に価しよう。このアルバムを最後に惜しくもヴィニーは脱退するのだが。

ヴィニーが抜けたあとの2枚では新加入したクリス・フランシスが奮闘してはいるものの、ヴィニーの抜けた穴を埋めるまでには至らず…と言うかゲイリーの作曲能力にかげりが見られた凡作「RETURN TO EVERMORE」から加入してしまったため、クリスも印象的に損をしているのかもしれない。うん、しかしヴィニーと比べたらやはりまだ若い。音が(あまり良くない意味で)堅く、角ばっている。まあここらは時間が解決してくれることを祈ろう。

現時点での最新作「TWILIGHT CHRONICLES」には少し復調の兆しあり。少し3rdの頃を思わせる佳曲“Twilight Masquerade”、非常に凝った美しいコーラス(だけ)が耳を引く“Oblivion”などが目立つ一方、全体を見渡しても決して悪くない。しかしTENの最高到達地点はこんなものではなかった。

ので、最後に提言。あの素晴らしきTENの復活に必要なもの、それは「印象に残るテーマ・リフ」「収録時間の3割減」。今回の記事を書くために聴きなおして、最初の2枚が意外なほどリフ・オリエンテッドな実にHRらしい作風であることを再認識した。B!の編集長さんが「FAR BEYOND~」のレビューで、「このバンドはシンプルに“歌とバッキング”でいい」と書かれていたが、それはあくまで良いリフがあってこそ成立する話。特にTENという“ハード・ロック・バンド”のブランドにゲイリーがこだわるのであればね(ソロ・アルバムなら別)。あの声よりも先にまずはリフで泣かせる、初期2枚のあの感触が鍵なんじゃないかな。

アルバムの間延びに関する問題はもはや言わずもがな。

それと4thあたりから目立ち始めたケルト調の曲の数々も悪くはないが、必ずしもTENの本分ではないから出来れば控えたほうがいいというのが個人的意見。良くも悪くもクセのあるメロディなので、アルバム全体の印象がそちらへ引っ張られるのがどうも気になる。

正直、ヴィニーが戻ってくれば…と密かに願っていることも一応記しておこう。でもインタビューなんか見るとゲイリーが彼のことを好いていない様子がありありと読み取れるから期待は薄いなあ。

純粋なメロディアス・ハードものの良品がどう贔屓目に見ても不足している昨今、後追いメタラーがTENの旧譜を安価で入手できることの意味は大きいと思う。少ないお小遣いでやりくりしているTENを知らない若い子なんかには、周りに合わせるために無理して新譜を買わずとも手に入りやすい宝物が目の前に転がってるよ、と言いたいところ。まずはこの1stから、それでゲイリーの声が気に入らなければ他の作品は買う必要なし。ていうか騙してごめんなさいってことで。その場合は誠に申し訳ありませんが他のCDにお金を回してください。ぺこり。

テーマ:HR/HM - ジャンル:音楽

【2008/03/10 21:28】 | HR/HM 旧譜レビュー | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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