2007年のベスト(後編・十選寸評&楽曲部門)
寸評と銘打ったわりにずいぶんな長文に…(笑)。まあこれは性分なのでお許しください。

よい音楽には、人にいつまでもその魅力を語らせたくなる何かが備わっていると思います。

今年、2008年も素敵な音楽にたくさん出会えますように。
① BAT OUT OF HELLⅢ: THE MONSTER IS LOOSE / MEAT LOAF

唯一、アルバム構成に満点をつけた作品。序盤のミュージカル的なまでに大仰な名曲の畳み掛けで聴き手をミート・ローフの世界に引きずりこんだが最後、生き急ぐ者たちへの賛歌 ”Alive”を中盤のハイライトにして流れはさらに加速、圧巻なのが ”What About Love”から締めの小曲 ”Cry To Heaven”への4連発…ただただ翻弄されるのみ。あまりの劇的さに胸がいっぱいで、もう「感動」以外の言葉が見当たらない。「ジム・スタインマン全面参加じゃないから」とか、「寄せ集めの曲で出来てんだろ」などといったつまらない批判をあっさりと時空の遥か彼方へと追いやってしまうほどの素晴らしさ。要所で聴かれる女性Voとのデュエットも最高なのだからたまらない(#13のジェニファー・ハドソンはこの後ビヨンセとの競演映画「ドリームガールズ」で一躍スターダムに駆け上がる。歌うまッ!)。半数近くの楽曲(とプロデュース)を手がけたあのデズモンド・チャイルドが「BAT OUT OF HELL」シリーズの魅力をファンの立場から客観的に把握していたことも勝因だろう。以前よりハードな感触が増したことも功を奏し、これは間違いなくシリーズ3部作最高の出来だ。こんな駄文をどれほどの方々がご覧になっているかは分からないが、少しでも気になったミート・ローフ未聴の人が居たら、騙されたと思ってぜひぜひ耳を傾けていただきたい。そうした淡い希望も込めて2007年度の1位に選出した。良き音楽を愛するすべての人々へ。

② THE ROARING OF DREAMS / PRIDE OF LIONS
 
個人的にはPRIDE OF LIONS全3作の中で一番の出来、メロディック・ロックの理想郷的なアルバム。トビー・ヒッチコックの情熱的な歌唱は最高の武器である一方、まだ若いためかその表現が直線的で押し引きの妙を十分に心得ていないところがあり(まあジミ・ジェイミソンと比較したら可哀想だが)、長時間にわたって付き合っていると聴き疲れを起こしたのが正直なところだ。天才ジム・ピートリックはそのあたりに気づいてか、柔らかな感触のKey音に導かれる80年代ふうのAOR曲を増やすことでトビーの持ち味を変に矮小化することなくこの問題を解消に近づけている。そうしたソフトな楽曲の増加は、従来の心躍る王道メロディアス・ハード曲のダイナミズムを倍増しに聞かせる効果もあって僕としては願ったり叶ったり。”Turnaround”で再び示された、本編の最後には必ず感動的な大作を入れるのだというジムの信念も美しい。また全編でエネルギッシュにロックしているのもスタジオ・プロジェクトと化している多くのメロハー・バンドたちとの大きな差で、笑顔でレコーディングしている様が聴いてすぐさま目に浮かぶ。怪しい風貌のバック・バンドの皆さんもプロ中のプロ、特に感情ほとばしる素敵なリードGをたっぷりと聞かせてくれるマイク・アクイノ氏には心からの拍手を送りたい。

③ DARK PASSION PLAY / NIGHTWISH

以前書いたレビューはこちら。アネット・オルセンが本当にNIGHTWISHにとって最高の人材だったのかどうかは次回作を聴いてみなければ判然としないところもあるが、少なくともこの作品で生まれた良質の化学反応は今後の彼らへの期待を煽るのに十分。いや、未だ手探り段階の現時点でさえも、このバンドの最高傑作といっても過言ではないほどの名作を世に送り出してくれたのだと僕は確信する。前任Voの離脱によって失われた穴が小さくないことはブレインのツォーマス・ホロパイネンも痛いほど理解していたからだろう、今まで以上に各楽曲のキャラの立て方やそれらの適材適所の配置に細心の注意を払うとともに、失われた多くの荘厳さや気高さを、極めて上品な(それでいて気位の高さを感じさせない)ポップ・センスを前面に押し出すことでしっかりとカヴァー、この辺のバランス感覚は本当にお見事。バンドの個性は確かに減じたが、僕はこのシフト・チェンジを文句なく支持したい。ツォーマスの音楽家としての総合的な技量の高さがそこかしこに表れる才気煥発の一枚。野獣声のマルコ・ヒエタラが最高の仕事をしている点も特筆に価する。注目のライブ、どうでしたか?

④ ISOLATE / CIRCUS MAXIMUS

かのマサ・イトー氏も褒めておられたプログレ・メタル界のメロディアスな超新星。ただ、あのレビューを見て少し心配になったのが、CIRCUS MAXIMUSが先達の美味しいとこ取りの器用貧乏型バンドだと思われないかということ。僕はむしろこの手のバンドにしては意外なほど芯が強く凛とした音を聴かせるな、という印象を受けていたのだ。一音入魂タイプの流麗なGソロや、各楽曲に配された分かりやすいフックに次ぐフックの連発を聞けば分かるように、いかにもプログレ的な「僕ら賢くね?」っぽいオーラや高い技巧性云々を提示するよりも何よりも、まず第一に良い音楽を届けたいんだ俺らは!という作り手の熱い想いがイヤってくらい伝わってくる。で、それほど濃口の音楽なくせに、キラキラとしたポップさや聴きやすい余裕ある空間を同時にきちんと確保してあるのは、陳腐な言い方だけどこれはもうセンスの良さとしか言いようがない。聴いた誰もが”Abyss”や”Arrival Of Love”には「そう来るか!」と強い衝撃を受けただろうが、終盤の追い込みもまさに圧巻。

⑤ VENUS DOOM / HIM

以前書いたレビューはこちら。大曲・小品を織り交ぜてわずか全9曲、その中で意外なほど綿密に考えられているドラマティックなアルバム構成を高く評価。前作よりも重く沈みこむような展開を見せる曲が多いにもかかわらず、前作に感じたちょっとしたダレが本作では殆ど気にならない。HIMの音楽は、絵の具で言うと黒色から淡い灰色の間のグラデーションを行ったり来たりしているだけで、決してカラフルではないのだが、その濃淡のつけ方が本作でより繊細かつ鮮やかになったと言えるのではないか。それでいて従来からの強みである聴きやすさをまったく失っていないのだから大したもの。少し背伸びしたいHR/HM(あるいはもっと広く洋楽ロック)初心者の中高生あたりはもちろん、バンドのイメージから敬遠してるかもしれない哀愁メロディック・ハード・ファンにだって少なからずアピールするであろう間口の広さは貴重だ。もっともっと名を上げ売れて欲しい。

⑥ SAOSIN / SAOSIN

衝撃度ではこのアルバムがダントツの1番。どこまでもどこまでも真っ直ぐなVoの歌い上げっぷり(ありがちなガテラルやスクリームに頼らなかったのは立派だ!)、細かい刻みから大らかに奏でるメロディアスなプレイまで難なくこなすG2本のスリリングな絡み、いい意味でハードコアの出自を強く感じさせるリズム隊…息を呑んで聞き入ってしまった出会いの瞬間を今でもありありと思い出せる。おそらく狭義のHR/HMの枠にはめ込むのは難しいバンドだがそんなことはどうでもよい。形骸化している「エモ」バンドの多くを尻目に、ことば本来の意味でエモーショナルなハードコアをやっているのはこのSAOSINのような若者たちを言うのではないのかね(直情的かつナイーブな詞も◎)。生粋のHR/HMファンにだって絶対にアピールするであろう、若さゆえの熱さ・野心ゆえの鋭さ・そして寂しげな笑顔から一筋の涙がゆっくりと零れ落ちているような独特の切なさ…を体現したような音像にぜひ触れてみていただきたい。ぶっ飛びますぜ。

⑦ AVENGED SEVENFOLD / AVENGED SEVENFOLD
 
以前書いたレビューはこちら。 各所のアルバム評を見ると「前はネタとしては使えたのに今回はそれすらなくなってツマンネ」みたいな論調と、前作以上の完成度の高さをあっさりと評価しちゃう向きとほぼ完全に真っ二つに分かれているように見えるが、僕は当然のごとく後者の意見に与する。前作を聴いた時点では半信半疑だった「A7Xがメタルであることへの確信」がその音からはっきりと読み取れるのが心強い。まあ、僕がバンド自体に思い入れを持つためには、もうひとつふたつはハードルを越えてもらわないとって感じなんだけど(慎重、というか臆病な性格なんです)、現時点での本作の出来のよさに関してはきちんと支持します。

⑧ DOMINO EFFECT / GOTTHARD
 
ごめんなさい、彼らの選出に関してはいくらかヒイキ入ってます(笑)。B!誌のレビューで編集長さんに笑えるほど持ち上げられていたことも(だったら表紙にでも取り上げてみやがれってんだい)、また我が心の師(?)藤木さんが「哀メロファン必聴の傑作!」みたいなちょっと的外れ気味のおすすめを書いていたことも一切関係ない、いつも通~りのGOTTHARDの新作。まあ僕にしてみれば彼らは作品が出れば殆ど無条件でランキングに入ってくるほど大切な存在なわけで。出来自体は前作よりやや上って程度だと思うんだけど、ここに来てどうしてこんなにヨイショされたのかね?いずれにせよ、未聴のHR/HMファンのみならず、全ての音楽ファンに歌神スティーヴ・リーの歌声が届いてくれることをこれからもただただ祈り続けるのみ。もっと良い楽曲に恵まれれば…ってのは言わないお約束。GOTTHARDの素晴らしさはスティーヴ&レオ・レオーニの強く固い結束あってこそなのだから。そうそう、ライヴも最高でした!

⑨ THE FALL OF IDEALS / ALL THAT REMAINS
 
今年もっとも「これぞメタル!」っていう音楽を聴かせてくれたのは、MEGADETHでもARCH ENEMYでもなく、ずばりこのALL THAT REMAINSだったのである。この切れ味&気風のよさは個人的に他の追随を許さなかった。呼び名はメタルコアでも何でも良いが、古参の頑固なスラッシュ・ファンにも十二分にアピールするであろうこの爽快さをむざむざ放っておく手はない。ミドル・テンポの曲が疾走曲と比較してややインパクトに欠ける点は今後改善すべき課題だと思うが、序盤の息もつかせぬ波状攻撃はこの筋に決して詳しくはない僕でも大絶賛したいところ。フィリップ・ラボンテの実に芸達者かつ男気あふれるVo、(少しベタなくらい)いかにもメタル的でドラマティックなメロディを聴かせてくれるGコンビにも要注目!

⑩ PARADISE LOST / SYMPHONY X
 
僕は2ndと4thしか彼らの音源に触れたことはなかったのだが、評判のこの新作を聴いてみればかつての音の貧弱さはどこへやら、実に剛毅でたくましい骨太の作風にいい意味で驚かされた。SYMPHONY Xというファンタジックなバンド名にたがわぬ必殺ネオクラ曲はもちろん、DREAM THEATERの新作と余裕で張り合う”The Walls Of Babylon”など、重厚なプログレ・サイドも充実しており、DTよりも音の焦点がギュッと絞れた作風がより僕の好みに合っていて、自然とこちらのCDに手を伸ばす回数のほうが多くなった。佳曲”Seven”のサビ、”No one there to catch you when you fall”という歯切れの良いことば選びは技あり。ブルージーな中低域にこそ持ち味のあるラッセル・アレンの歌声はともすればくぐもって聞こえがちなので、「音と共に歌詞でキャッチーさを演出する」というこの路線が今後さらに開拓されればもっと面白くなりそう。

アルバム十選以外から選出したベスト・チューン10曲は以下の通り。アルファベット順。

①Couple Suicide / ANNIHILATOR
②The Last Enemy / ARCH ENEMY
③Blind / DOGPOUND
④Make A Wish / THE LADDER
⑤骸 / 陰陽座
⑥Disco Queen / PAIN OF SALVATION
⑦I’ll Never Fall / STAN BUSH
⑧Pilot In The Sky Of Dreams / THRESHOLD
⑨Don’t Turn Away / WHITE WOLF
⑩What Have You Done / WITHIN TEMPTATION


はー、疲れました。ここまで目を通してくださった奇特な方が居ましたら(笑)、どうもありがとうございました。

あ、それと最後に、メタルではありませんがMELEE「DEVILS & ANGELS」の出来も素晴らしかったので特筆しておきます。そこいらのワンパターン・美メロ・バンドとは一線を画す、80'sマインドたっぷりの巧みな曲作りに敬服、爽やか系王道曲や感動のバラードはもちろん、“You Got”みたいなお洒落ナンバーをさらっとこなすのも彼らの強み。次回作にも注目です!

テーマ:HR/HM - ジャンル:音楽

【2008/01/30 10:40】 | 年度別ベスト | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
<<最近聴いた音源たちの数々 | ホーム | 2007年のベスト(前編・アルバム星見表)>>
コメント
こんばんは。
十選では①②⑥しか持ってませんが、私も絶賛です。
それにしても日本でのMeat Loafの過小評価は何なんでしょうか。
IIIは個人的には最高傑作だと思ってますし
メロハーファンにも受ける作風なんですけどね・・・
SAOSINはカッコよくてドラマティックという
HMファンにもお薦めなんですが、
エモだからスルーされてるんですかね。
もったいないことです。
【2008/02/06 01:29】 URL | RABI #mxdmXl.w[ 編集] | page top↑
RABIさんこんにちはー。コメントありがとうございます。

ミート・ローフのこの認知状況に関してはもうお手上げ状態です。
彼はルックスが特別優れているわけでもなければ、メディアに過大評価されて持ち上げられたのでもないし、また、超・圧倒的な歌唱表現力を持っているわけでもない、と個人的には考えます。
そんな彼の作品がなぜこれほどまでに(日本を除く)世界中の人々に愛されているのか、それはただひたすら楽曲が素晴らしいものぞろいだったから、その一点に他なりませんよね。
僕もこの「Ⅲ」が最高傑作だと信じます。
細かいジャンルの垣根を越えて、すべての音楽ファンに聴いてもらいたい!そんなことを口走ってしまう自分をちっとも恥ずかしいと思いません。
それくらいの普遍性を持った作品です。

2007年最大の拾い物であるSAOSINに関しては、ジャンル的に新譜で買うのが正直少し不安でもあったので、各所の評をかなり参考にしました…ってことは当然RABIさんのレビューもでございます。毎度毎度ありがとうございます(笑)。
おかげさまでいい出会いが出来ました。去年いちばん感情移入して聴いたのはこの作品かもしれません。

ミート・ローフもSAOSINも、それぞれ「なぜ、僕はメロハーが好きなのか」あるいは「なぜ、僕はメタルが好きなのか」という問いに、違った角度から光を照らしてその証明を与えてくれる名盤です。
典型的な音像からは少し距離があるかもしれませんが、僕と同じような自覚を持って貪欲にこういう音楽を探している人には、その「核」の確かさにおいて間違いなくオススメできる2枚だと思います。
【2008/02/06 15:40】 URL | むーじゅ #-[ 編集] | page top↑
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://mooju.blog121.fc2.com/tb.php/41-6b6da068
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |