HAREM SCAREMについて色々と考えてみる(その3+おまけ)
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では、なぜこれほどまでに日本のファンは「HAREM SCAREM」と「MOOD SWINGS」への思い入れが強いのだろうか。色々と考えてみた結果、この2枚には(おそらく若さゆえの)“熱さ”や“必死さ”、「デカくなりたい!」という“野心”etc..といった、今の彼らには望むべくもない、ほとばしる「何か」が深く強烈に刻印されているからではないだろうか、という抽象的極まりない仮説が頭に浮かんだ。

いまやプロデュース業や作曲関連の仕事だけで食べて行けるほどの腕を手に入れたハリーやピートたちからすれば、(彼らの厳しい目から見て)拙さや荒削りな部分がちらほらと見え隠れする(のであろう)1stや2ndにこだわる多くの日本人リスナーの姿勢には「Why?」の一言なのだろう。だが、ミュージシャンとしての年輪を着実に重ねながら手に入れた「余裕」は、失われた上記の「何か」を埋め合わせるほどの決定的な要素にはならなかった、と思う。その証拠、になるかどうかは分からないが、例えばハリーがHESS名義で2003年に発表したソロ・アルバム「JUST ANOTHER DAY」に再録された名曲’Sentimental Blvd.’は正直オリジナルほど胸に迫ってこなかったのだ(ダレンが歌っていなかったからではない、多分)。

もう一つ例を。HAREM SCAREMに名義を戻しての第1作「WEIGHT OF THE WORLD」僕の中で3番手に挙げられるアルバムで、その完成度はきわめて高い。ここからハーレムを聞き始めたファンが「私の音楽人生はここから変わったの!」と叫んで、傑作として祭り上げたってちっともおかしくないくらいの出来である。“ゴムジャケ”にすら少なからぬ感動を覚えた僕が言うのだから間違いないのだ。1st・2ndに対する思い入れが強すぎるためについつい忘れがちになるが、名義再変更後は特に、ハーレムの音楽の質が初期のそれよりも劣っているということはないと思う。ただ、アルバムのところどころに感じられる緊張感の欠如、弛みといった「余裕」の要素が「HRアルバムとしては」マイナスに働いている感も否めない。また、様々なスタイルの変遷を経て音楽的に拡散傾向を示してしまったのも大きなアドバンテージにはならなかった。もちろん、あの「MOOD SWINGS」だって曲のキャラクターにバラつきがないわけではないのだが、「あるべき曲が、あるべきところに収まっている感」は「WEIGHT~」の比ではない。そして、僕のそうした好意的な見方に資しているのが前述の「何か」のような気がしてならないのだ。

だからといって「もっと必死になれよ!緊張感持てよ!あの日の自分たちを取り戻せよ!!」と彼らを責めるのはまったくもって理不尽である。ミュージシャンとして成長していくにつれて徐々に失われて当然の「何か」が、皮肉にも初期2枚を限りなく“完璧”に近づけているとすれば、本人たちからすればどうにもやりきれない話だ。「WEIGHT~」以降の「いかにもハーレム」な洗練された音楽を提示されても、ファンは「確かに良い。が、まだまだ物足りないぞ!」と叫ぶのだから、解散もやむなしといったところなのだろう。

いつだかB! 誌の大野さんが、「CDとして残された音楽作品は老化も劣化もしないがゆえに、時としてミュージシャンにとっては残酷な足枷になる」てな文意のことを書かれていたが、HAREM SCAREMの場合もまさにそれ。だが、ハリーとピートはHR/HM史に燦然と輝くこの2枚を作ったことを開き直って終生の誇りにすればよいのだ。少々の自嘲を込めて振り返るような、愛憎半ばした過去にするには勿体ないほどの傑作なんだから。何が凄いって、こんなとんでもないシロモノを最初の2枚で作ってしまった彼らの突出した才能と、「あんなのいつだって作ろうと思えば作れるよ」という不敵で素敵な音楽センスだ。SLAYER is SLAYERではないが、ハーレムの音楽もハーレムにしか作れない(僕はどのアルバムを聞いても強くそう思う)、その偉大なる礎を築いた原点が初期の2枚にはある。

作り手の環境・才能・センス・欲求etc…が信じられないほどの高次元で理想的な化学反応を起こした「HAREM SCAREM」「MOOD SWINGS」、やはりこの2枚は奇跡の作品だったということなのだろう、と何だかありがちなまとめを記してひと区切りつけよう。未聴のメタラー諸氏、現在日本盤は廃盤(なんたること!)ですが中古屋なら比較的安価で見つかるので発見しだいすぐに捕獲されたし。女の子にもアピールする聴きやすさも大きな強みなので、非メタルなハニーの居る方もご安心してお買い求めください。個人的には特に若き中高生に一度は聞いてもらいたいなあ。昨今のモダンなHR/HMを聞いている子たちにはどんな風に映る音なんだろう。あの時の僕のように大いなる感動を覚えてくれたら本当に嬉しい。決して風化しないHAREM SCAREMのロック、Only The Good Music Will Surviveなのだ…なんつってな。ここまで目を通してくださった奇特な方がもしいらっしゃいましたら、どうもありがとうございました。

今日のBGM
Stranger Than Love / HAREM SCAREM

moodswings.jpg このアルバムに収まった数多の鉄板チューンの中で、僕がどうしても一曲だけ選ぶなら、これ。ゆったりとしたコード進行、ドラマティックな展開美、熱く熱く歌い上げるハリー&コーラス、そしてピートの感情過多気味のギターソロには自然と身がよじれてしまう。「愛よりもおかしなものは無いよね」なんて、まだまだ小僧っこの僕はきちんと分かっちゃいないけど。恋するすべてのメタラーさんに聞いてもらいたい名曲!



おまけ:極・私的お別れライブ・セットリスト希望 (ダレン・スミスは絶対に連れてくるように!)

1. Saviors Never Cry
2. Reload
3. Stuck With You
4. Draggin’ Me Down
5. Staying Away (feat. Darren Smith)
6. This Ain’t Over
7. Next Time Around
8. Stranger Than Love
9. Baby With A Nailgun (instrumental)
10. Something To Say
11. Distant Memory
12. Sentimental Blvd. (feat. Darren Smith)
13. Tables Turning
14. The Lucky Ones
15. End Of Time

~encore 1~
1. Out Of Love (feat.John Fiore ? 笑)
2. Die Off Hard ~ Lost In Yesterday

~encore 2~
1. Just Like I Planned
2. Had Enough

「否」の意見も結構多く見られる今回の来日公演で演奏していない曲だけで組んでみたが(3rdと「OVERLOAD」の曲はあえて外した)、上記以外の曲で下手したらもう2セットくらいはお気に入りを作れそうな気がする(ラストは'Voice Inside'や'Lost'なんかでも良さげね)。活動全体を通してその音楽のクオリティが低かったことなど一度もない。どのアルバムにも耳を引く名曲・佳曲が転がっている。やはり偉大なプロフェッショナル・バンド、音楽職人集団なのだ。ラスト・アルバムはどの方向に転がるのか、今から楽しみ(と一抹の不安)。


【2007/11/22 18:31】 | 音楽語り | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
こんばんは。全て読まさせていただいた奇特な人です(笑)
HSへの熱い思いが伝わってきましたよ。
HSの人気に陰りが見えたのは「RUBBER」からですね。
「RUBBER」ツアーでもライブに行きましたが、
大盛況で選曲も今回のより全然良かったんですけどね。
むーじゅさんがおっしゃるように、
緊張感の欠如、弛み・音楽的拡散と言った要因が原因でしょう。
彼らはいつまでも1st・2ndにこだわる日本人を
理解できないのかもしれませんが、
それだけの名盤を作ってしまったのです。

【2007/11/22 22:03】 URL | RABI #mxdmXl.w[ 編集] | page top↑
RABIさん、こんばんは。
拙文に貴重なお時間を割いていただいてありがとうございます(笑)。

以前、RABIさんの書かれたライブの感想に頷いてコメントを書いてから(その節は失礼しました)、ふつふつとHSについて思いのたけを語りたい願望に駆られまして。。

「RUBBER」ツアーに行かれたのですね、なんとうらやましいこと。
HSの大きな分岐点となった当時を知る方のご意見は貴重です。
ライブは盛況でも全体的には確実にファン離れが進む…何とも興味深い話ですね。

記事にも書いたように、HSには1st・2ndの素晴らしさをもっと誇りに思ってもらいたいものです。
「WEIGHT~」以降、開き直れば初期のサウンドをほぼ忠実に再現する能力がありながら、実は本人たちがその音の大ファンではなかった、というのが何とも切ない話です。
【2007/11/22 23:33】 URL | むーじゅ #-[ 編集] | page top↑
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