FIRST SIGNAL (2010) / FIRST SIGNAL
firstsignal.jpg 1. This City
 2. When You Believe
 3. Part Of Me
 4. Crazy 5. Goodbye To The Good Times
 6. First Signal
 7. Feels Like Love This Time
 8. Into The Night
 9. When November Falls
 10. Yesterday's Rain
 11. Naked Desire

新譜レビューはこれでひと息。僕が涙を呑んで解散を看取ったカナディアン・ハードロック・バンドHAREM SCAREM(以下「ハーレム」)のシンガー、ハリー・ヘスを主役に据えたプロジェクト、FIRST SIGNAL。僕は外盤を買って音の印象だけでレビューを書いたので、あるいは事実に反する思い込みが多々あるかもしれません。ご了承ください。

さて、まずはこの声をメロディック・ハードロックの世界に引き戻してくれた「Frontiers」のセラフィノ・ペルジーノ社長に感謝したい。これは個人的にジム・ピートリックとジミ・ジェイミソンの仲を取り持ってくれたあの「CROSSROADS MOMENT」以来の快挙(大げさかな?)。けっこうな皮肉屋のハリーさんご本人がどれほどの自己評価をしているのかは分からないけれど、やはりこの分厚いカスレ声には聴き手の心を縦横に大きく揺さぶる特別な何かが宿っていると思えてならないのだ。

肝心の内容は、これぞ「Frontiers」発の完璧な美旋律ハードロックの集合体。ありがたいことに、事前に少し心配していたハリーの歌唱と外部ライター陣の用意した曲との相性は予想以上に良好で、例えばゲイリー・ヒューズ(TEN)の「ONCE AND FUTURE KING」で彼の声を聴いた時に覚えたような微妙な場違い感はほとんどない。リードトラックの“This City”こそ実に明快なメロディアスハードだが、収録された曲の半数以上は穏やかな哀愁をほのかに漂わせているメロウ調で、夏が終わり徐々に寂しさを増すこれからの季節にピッタリの作風と言えそう。“Feels Like Love This Time”や“Into The Night”あたりにはDEF LEPPARD風味もちらりと見えて面白い。若き天才エリック・モーテンソン(ECLIPSE)が書いた“When You Believe”と“Yesterday’s Rain”は流石の出来ばえで、爽快至極な前者はJOURNEYふうのイントロから始まる贅沢なメロディ展開が感動モノのハイライト曲。後者はW.E.T.の次回作のために取っといてもらいたかったくらい(笑)。ドラマティックな終曲の“Naked Desire”では僕の大好きなダレン・スミス(ハーレムの元Ds)の特徴的なバックVoがひときわ堪能できて、ハーレムマニアとしても素直に嬉しい。もちろん捨て曲など見当たろうはずもない真にプロフェッショナルな仕上がりになっている。

と、かように当代メロディックロックの粋を集めたと称してしかるべき最高品質のアルバムなのだが、「ハーレムの音楽とともに大人になった」と書いても特に誇張表現にはあたらない僕のような重度のハーレム病リスナーには引っ掛かる部分も確実に存在する。


ズバリ言って、あまりハーレムっぽく聞こえないのだよね。


誤解を恐れずに想像を巡らせれば、「Frontiers」から作曲組に出された指令はおそらく(他のプロジェクト同様に)「最高にメロディックでイカした曲を書いてくれ!」的な内容であって、「今回は特別にハーレムっぽい曲を書いてくれ!」ではなかったのだと思う。確かに素晴らしくメロディックな秀曲揃いなのだけど、どうもハーレムとは似ているようでかなり異なる質感の音像なのだ。

このFIRST SIGNALは「MOOD SWINGS」あるいは「WEIGHT OF THE WORLD」時代の再現を目指したという宣伝をされているようだが、おそらくこれは作品が完成した段階で後付けされたコンセプトではないだろうか。もしもそうしたハーレムの世界観を可能な限り忠実に復元することが目的ならば、リチャード・マークスの既発曲カヴァーを2曲も入れたりはしないだろう。HR/HMファンにも確実にアピールする素晴らしい曲だし、物凄-くハリーの声にマッチしているのは確かだけど、それとこれとは話が別なのだ。どんな曲でもハリーの歌とダレンのバックVoで盛り立てさえすればハーレムっぽく聞こえるだろうと考えていたなら、それは「Frontiers」の見込み違いだと言わざるを得ない。

が、僕はハリーを再び表舞台に引っ張り出してくれた「Frontiers」を決して責められない。作り手が変われば音の質感が変わるのは当たり前だし、どんなに彼らが頑張ってみたところでハーレムの残した傑作の数々に肉薄するのが難しいのは聴く前から容易に予想できていたこと。“This City”を試聴したときの予測を大幅に上回る楽曲を揃えてくれた「Frontiers」の見事なお膳立ては十分に賞賛に値するだろう。

むしろ重要なのは、「ハーレムの音楽はハーレムにしか作れない」、この圧倒的な真理が、「ご本人登場」の本作をもってしても覆せないと分かってしまったことだ。弾けば弾き倒すほどに何故か音の透明度を増していくピート・レスペランスの超ハイセンスなGプレイ、そこいらの純粋真っ直ぐなメロディアスハード勢とは明らかに一線を画す楽曲の「ひとひねり」、複雑に構築された音楽を分かりやすく聞かせるビッグで洗練された音作り、甘さと毒とが巧妙に入り混じるハリー独特の世界観を持ったキャッチーな歌詞…そのすべてがハーレムの音楽には必要不可欠な要素だったのだと改めて痛感させられた。

だから僕は、本作を聴いていると「ハリーの声が聴ける喜び」以上に「ハーレムの音楽が聴けない悲しみ」の方向へと気持ちが強く流されてしまう。製作背景や過程がどうであれ、「良いものは良い」が音楽を聴く上での僕の基本的信条だけれども、おそらくもうハーレム名義の新作を聴く機会が訪れないであろう現在、「もう一度ハーレムの音楽が聴きたい!」という叶わぬ願いをちくちく刺激されるのは結構辛い。プロジェクト作にありがちな「仏造って魂入れず」といったネガティブさが感じられないのはもちろん、ハリーからの単なる「元気な便り」のレベルなんぞ超越した逸品なのに、僕がどうしても深く感情移入できないのはこうした理由による。皮肉でもなんでもなく、このアルバムを素直に楽しめる人たちを本当に羨ましく思います。


(おまけ)

HAREM SCAREM / Dagger

僕があまりに素直すぎる本作を聴いたあと猛烈に欲しくなったのが、カタログ的にはやや過小評価に喘ぐ存在の「OVERLOAD」。オープニングからして“Dagger”だものね。発表当時「エモっぽくなったな」とお嘆きになったファン諸兄、いま聴くと素直にカッコいいと思いません?

HAREM SCAREM / Sentimental Blvd.

久々にダレン・スミスの名前が出たので彼の熱唱抜きには語れないこの不朽の名曲も。「メロディアス・ハードロック」とは何か、どういう展開が「ドラマティック」で、どれほどの演奏が「テクニカル」なのか。大切なことはすべて「MOOD SWINGS」が教えてくれました。

テーマ:HR/HM - ジャンル:音楽

【2010/09/25 14:38】 | HR/HM 新譜レビュー | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
こちらでも、こんばんは。
そうなんですよ、あまりハーレムっぽく聴こえないんですよね。
それはそれでいいアルバムでしたし、ハリーの声を再び表舞台に引っ張り出してくれたセラフィノも天晴れで、ハーレムってこんなに素晴らしいバンドだったんだなって再確認できましたし。これが大きかったかなって。このアルバムに対して擁いた印象は。
ハーレムを埋まらせることはないですし、凄さを再確認できたのがこのプロジェクトの成果のような気がします。
【2010/09/25 18:15】 URL | 敏紫 #-[ 編集] | page top↑
敏紫さん、こちらでもこんにちはー。

まず、敏紫さんの感想が僕のそれと通じていることに何だかホッとしました。世間的な評価は非常に高い作品なのでしょうが、僕としてはどうにも素直に大絶賛という感じではなかったので。

それから「いいなあ」と思ったのは敏紫さんのポジティブな考え方です。僕が本作を聴いて「もうハーレムは戻ってこないのに…」と少しいじけるような(笑)気持ちを覚えたのに対して、敏紫さんからは「これをきっかけにハーレムの良さを再確認しよう!」というとても前向きな姿勢が見えますよね。ここらへんはきっとお人柄のなせる業かなと思います。

ということで僕も敏紫さんを見習って、本作でハリーの声が戻ってきた喜びを素直に噛みしめるとともに、改めてハーレムの残した功績を機会があるごとに語っていこうかなと思います。気持ちを整理するには少ーし時間がかかりそうですけどね。
【2010/09/26 09:27】 URL | むーじゅ #-[ 編集] | page top↑
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