HIM (2007) / VENUS DOOM
HIMvenusdoom.jpg 
 1. Venus Doom 2. Love In Cold Blood 3. Passion's Killing Floor
 4. Kiss Of Dawn 5. Sleepwalking Past Hope 6. Dead Lover's Lane 7. Song Or Suicide 8. Bleed Well 9. Cyanide Sun


ゴスで耽美なダーク・ロックと言えばこの人たち、フィンランドのHIM待望の新作。と言っても、僕は「RAZORBLADE ROMANCE」と前作「DARK LIGHT」しか持っていないゆえニワカもいい所なのだけどあえてレビュー。2枚とも素晴らしい出来だったからね。

ヴィレ・ヴァロの発言と各所の評価から判断して、前作よりも重く暗い内容になると事前に予想。ただ、ヴィレが大好きだというSABBATHからの影響をさらに前面に押し出すとの報に、例えば大作⑤などがドゥーム系引きずり型ズルズル・リフによる(言い方は悪いけど)「時間稼ぎ」的なものになったら嫌だなあという一抹の不安もあった。と言うのも、僕はヴィレと違い圧倒的にディオ/マーティン期の支持者なので、一般的なサバス者が本来入れ込むであろう「へヴィさ」という観点からSABBATH(≒トニー・アイオミ)を高く評価したことはないに等しいのだ。もっと分かりやすく書けば、ヴィレと仲良しリー・ドリアン総帥率いるCATHEDRALの「ENDTYME」を聴いて危うく意識を失いそうになったくらいの男なのだ(「THE ETHEREAL MIRROR」はまあ聴けたけど)。ここはもう本国では(本人がどう思っているかはさておき)ロック・スターの座にあるというヴィレのバランス感覚に期待するしかないな…と。

で、結論。上記の心配は完全に取り越し苦労だった。彼らはもう「ヴィレさえ歌っていればHIM」という領域に到達しているのかもしれない。それにしてもいったい何なんだろうね?歌が特別に上手いわけでも凄いわけでもないのに、この吐息交じりの妖しい声に潜む麻薬成分って。

危惧していた「へヴィさ」の部分に関しては、率直に言って「あ、こんな程度か」というレベル。いや、もちろん悪い意味ではなく。確かに前作より聴感上は重量感を増しているが、それは決して「俺らはこんな風にも出来るんだぜ、売れ線に走ったわけじゃないんだぜ」みたいな、底の浅い顕示欲やアングラ・マニアへの言い訳によるものではない。例えば①・③のように遅く沈み込むようなパートを挟み込んでからまた何事もなかったかのように走り出すなんていう、メタルの世界での常套手段というか愛すべきお約束の展開も、いつもと異なったHIMの魅力を上手くあぶり出す上で非常に有効な手立てになっている。抽象的な物言いだけど、重さにもきちんとした理由があるというか、むしろあるべき必然性さえ感じさせるというか…だから僕も違和感なく自然にこの変化を受け止められたのだと。

ファンが期待するであろう妖艶かつ哀愁たっぷりなHIM節は③・⑥・⑧などに従来よりグレードアップした形で表現されているし、大作⑤にもほかの曲と変わらずキャッチーなメロディが配置されていてダレない。生々しさが技ありのインタールード⑦、そしてほのかな希望を感じさせる⑨の締めといい、全体の構成も良く考えられた素晴らしいアルバムだ。

疑問があるとすればシングルに選ばれたのがやや明るい曲調の④ってことくらいか。アルバム本編ではどちらかと言えば箸休め的な存在だし、新機軸をアピールしたければ素直に①を選べば良かったんでないかい。ま、些細なことですが。

その①の詞じゃないけど、「堕ちて行く俺を見ていてくれ」的な世界観も含めて、HIMは巷のいわゆるV系好き女の子などにも強力にアピールしそう。あくまでもイメージだけど。また、音がいわゆる「広義のメタル」の範疇に属していることも好材料。B!誌の奥野さんが書いてた「ニュアンスとしてのメタル」ってやつですね。そのことを証明するかのように、繰り返し聴いてもコテコテのメタル音を浴びたときのような聴き疲れが起きないもの。「聴きやすくて良いね」が文字通り身を削るようにしてこの作品を完成させたヴィレにとって褒め言葉になるかどうかはともかく。

よくHR/HMの入り口はメロハーが妥当じゃねとか、いやいやメロスピの速さが正義だぜとか、はたまたエアロやBON JOVIのようなメジャー系でまずは様子見しときましょうよetc..と、メタル人口拡大への作戦会議が日本全国津々浦々で開かれている昨今だが(?)、このHIMもまた純粋無垢なボーイズ&ガールズを「こちら側」へ引き込むのに十分な求心力を持つ稀有なバンドではないだろうか。

そうそう、もちろん「あんなナヨっちいゲイ・メタルなんか」と鼻息の荒いリアル・メタラーの諸兄も機会があればぜひどうぞ。彼らは本物ですよ。

【2007/10/29 19:14】 | HR/HM 新譜レビュー | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<昨日の買い物 | ホーム | 今日の買い物>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://mooju.blog121.fc2.com/tb.php/16-df8637c7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |